母を背負って、桜並木を歩いている夢だった。
心の中で、ちっぽけな私が「夢を忘れたくない」と叫んでいた。
だから私は、夢の記憶を書き残すことにした。
書き残す文章は、綺麗な文章でなければならない。
でも私には、想いは有っても上手くは書けない。
それで私の、つたない文を素敵な人に校正と編集して頂いた。
『気づいたら、母と私はそこにいた』
それは夢の中の話。
私は前に向かってゆっくりと歩んでいた。
飽きれてしまう程の単調な夢。
でもなぜか、喉のあたりに引っ掛かるものを感じた。
「いったいなんだろう。」
ふと視線を向けると、そこには母の手があった。
見間違えるはずなんてない。
懐かしい、あの優しい母の手だった。
そういえば背中に少しの重みを感じる。
どうやらこれは母の重みらしい。
母は今、私に背負われているのだ。
視界の端に、母の少しくたびれた農作業用の服が映った。
それにしても、いつの間にこんなに軽くなってしまったのか。
私は急に自分が不甲斐なくなった。
今まで気づかなかったけど、私はこれまで母にたくさん心配をかけてきたのだと思う。
いや、もしかすると私はわざとそのことに気づかないようにしてきたのかもしれない。
私は母の服を綺麗な和服に着替えさせた。
これでよし。
私はまた、母を背負って歩き始めた。
道の脇には立派な桜が咲き誇っている。
風が吹くたびに舞う桜が、時折私と母のもとにやってきた。
この道は初めて通る道だとずっと思っていたけど、
どうやら違うらしい。
この道は、自分が幼い時に母の背に背負われて歩いた道だ…!
そう気づいた瞬間、胸がきゅーっと締め付けられるのを感じた。
少しだけ、息を吸うのが苦しい。
私の背中で、母が何かを話していた。
たぶん、とりとめのないの世間話だったと思う。
でも詳しい内容はどんなに記憶を遡っても思い出せない。
ただ私は、母と話を合わせることに少しばかりのもどかしさを感じていた。
母にとって私は子どもでも、今の私はもう子どもではないからかもしれない。
もう子どもの時の私には戻れないのだ。
母との距離は大分離れてしまった。
なんともいえない寂しさと、
小さい頃歩いた道をまた母と一緒に歩けている嬉しさ。
桃色の景色の中、母を背負って歩く私の心の中で
いろいろな感情が綺麗な模様を描きながら静かに渦巻いていた。
続く~~。
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